「お父さん。棟梁がお爺ちゃんから鋸の目の立て方を習っていますよ」「お母さん。この目立てを習うことは大工さんにとって、とても大切なことなの。鋸の切れ味が仕事に大きく影響し、切り口の良し悪しを決めるんだよ。だから鋸は定期的に目立てを行うんだ」
「お父さん!そういえば令和の時代、製材所で帯鋸の目立てを機械がやっていたわね。見たことがあるわ。この目立てを全て手作業で行うのだから大変な作業なんですね」
「おい!清助。ヤスリを深く入れると鋸が早く減ってしまうぞ。この鋸は中々手に入らない大切なものだからな。よく注意して行え!」などとお爺ちゃんに注意されています。
この鋸には使用する目的によって何種類もの鋸があります。2人が会い向かい合って切る幅の広い大きな鋸から、細工をする小さな鋸まで様々です。この鋸を全て目立てを行うことは、時間もかかり、技術も必要でした。
「おい!清助。今度は刃物研ぎだ。砥石には、このように荒研ぎ、中研ぎ、仕上げ用の砥石があるんだ。まず荒研ぎから覚えろ!刃物が切れないと仕事にならんぞ。研ぎ方をしっかりと覚えろ」と厳しい声が掛かります。毎日、毎日仕事が終わると清助は、鋸の目立てと刃物研ぎを、提灯の灯りを頼りに暗い作業場の中で精を出しました。
「お父さん。大工という仕事は色々なことを学ばなければならないから本当に大変ね」「お母さん。こんなことは序の口だよ。これから大工としての技量を学び、磨かなければならないんだ。墨壺をどう使うかも、大工の大切な技なんだ」
「お父さん。雪が降って来たわ」「こりゃ!本格的な雪になるぞ。さあ!これから材木の切り出しがはじまるぞ!」「お父さん。何で雪が降ると材木の切り出しがはじまるの?」「お母さん。令和の時代は高性能林業機械などを使って、雪のない時に木材を運び出したのさ」「お父さん。私も見てたわ」「今はそんな機械はないから、全て人の力で、材木を切り出さなければならないんだ。それには雪は大切な大切な天が与えて下さった運搬資源さ」「お父さん。雪を利用してどの様に材木を出すの?」「もう少し雪が深くなると本格的に材木の切り出しがはじまるよ。よく見ておいで。口で説明するより、百聞は一見にしかずという諺があるだろ」半月程過ぎると本格的の材木の切り出しと運搬がはじまりました。
「お父さん。凄いことがはじまりましたね。あんな大きな木を切って運び出すの?。そんなこと本当に出来るの?」と私は疑心暗鬼でした。「今日はこれまでにしよう。」とお父さんが言い2人は抱き合って休みました。