私は夏用と冬用の二面を、季節に合わせて使うことが出来るWベッドです。お嫁入りした時は、9月で暖かい時でしたので、私は「まだ夏用でいいなぁ」と思っていました。やはりお店の担当者の方が夏用の面を上にしてセットされ、新しい敷布がセットされました。これで一安心です。
新しい敷布は、私にとって花嫁衣装の打ち掛けです。奥様が横になり「いいわね」と、ニコニコしながら声を掛けて下さいました。嬉しくなりました。
暫くすると、旦那様が意外なことを言われたのです。「このダブルベッドより、もう一回り大きいクインベッドがいいなぁ。これでは少し狭くない?」とお嫁入りした私を、早々と追い出そうとされるのです。
「旦那様!ちょっと待って下さい。私は今日お嫁入りしました。返されては出戻り娘になります。もう実家には帰れません」と泣き出してしまいました。旦那様は、私の思いなど全く無視して「店長にクインベッドに今から変えることが出来ないか電話するわ」と言って、隣の部屋に行かれました。私は旦那様の一言で、地獄に叩き落とされてしまったのです。
何と言うことか!
旦那様が店長と話をして見えました。私はどうなるのかと、心配で冷や汗が出て来ました。冷や汗で、旦那様と奥様の愛の巣となる、大切なベッドを濡らす訳には行きません。溢れ出そうな悔し涙を、じっと堪えていました。
続く
白鷺です。