卒業 27. 樽が決め手に

全従業員研修では、樽の組み立てと共に、側板に段差のついた樽と、段差の無い正常の樽の中に、其々水を入れ、その違いを従業員自身がコップを使い計りました。すると参加者から「ドッ!」と声が上がりました。( この樽については(株)飛泉のホームページ「樽式活性化法」をご覧下さい。)

そこで [ この水は、皆さんに支払う給料の源「利益」です。この水の差は、貴女たちの日頃の勤務態度が生んでいるのです。沢山の給料を求めるのであれば、この短い側板から流れ落ちる水を、食い止めなければなりません。皆んなで力を合わせ、この水を食い止めましょう ] と話しますと、皆んなの眼の色が変わりました。求めていた「意識改革」の第一歩が、この樽によって踏み出せたのです。

この全従業員研修で、従業員の仕事に対する意識は大きく変わりました。このチャンスを逃さまいと、生産計画を立て、計画的に生産を進めることを考えました。しかしデータがありません。生産日報を作成し、各ライン毎の生産枚数を収集し、データ化することにしました。

その生産枚数をデータ化する内に、ミシンのトラブルが多いことに気付きました。このトラブルを生んでいたのは、国営企業から引き継いだ、中国製のミシンだったのです。このミシンは、油漏れが発生するなど、酷いミシンでした。

早速、董事長・オーナーと相談し、日本の中古のミシンを導入することにしました。このミシンは段階的に納入され、半年後には全てのミシンが入れ替わりました。この日本製のミシンに変わったことと、従業員の意識改革によって、不良率は大幅に下がりました。

真っ暗なトンネルの中で、少し光が見え始めました。

   唯の水  その本質は  利益だと 

    知れば輝く 獲物追う眼に

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