卒業 16. 五段重ね

居酒屋で出会った都市銀行の方の紹介で、お客様とお会いしました。このお客様は、テレビの基盤などを、生産する会社の社長で、日本国内とともに、フィリピンや米国など、海外にも工場を持って見えました。今回、依頼があったのは、秋田県の工場の活性化でした。

成人を迎えた時に、一人で東北三代祭「仙台の七夕祭り・青森のねぶた祭り・秋田の提灯祭り」を見に行きました。その素晴らしいお祭りに魅了され、ぜひ東北で仕事がしたいと夢見ていました。

その夢が叶うのです。一つ返事で活性化を引き受けましたが、それは「東北独特の方言と文化」に悩まされる、四苦八苦の活性化となりました。この工場は社員数180名で、主にテレビの基盤を生産していました。

活性化に入る前日の夕方、社長から電話が入りました。「今晩、先生の歓迎会が行われます。この地域では、人間関係を酒を呑むことで作る風習があります。大変な酒を呑む宴会になりますので、ラーメンなどを食べて、少し腹ごしらえをして来て下さい」とのことでした。

そして料亭に入りますと、私の席は正座で、左側に市長・議長、右側に会長・社長が座られ、総勢18名ほどの宴会でした。

社長と市長の挨拶の後、宴会が始まりました。4人の芸妓さんの中の一人が、大きな朱塗の五段重ねの盃を、私の前に置かれました。そして2人の芸妓さんが一番上の盃に、並々と酒を注がれました。

会長の音頭で乾杯です。私はこの並々と注がれた酒を、ゆっくりと一気に呑み干しました。すると市長から「先生は俺たちの仲間や!こんな嬉しいことはない」と全員が拍手をされたのです。この後、五段重ねのは盃は段々と大きくなり、二次会、三次会を含めると、その酒の量は、1升を越えたのではないか?と思います。一生の内で一番酒を呑んだ、記念すべき日となりました。

正に大酒に洗礼されて活性化が始まりました。

   大盃に  並々注ぐ  試し酒

    人生一度の 勝負を掛けて 

   懐かしき  結婚式の  祝い酒

    味は消え失せ 酔いは回らず

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