卒業 9. 飛騨めでた

このホテルは高山市が大口株主で、支配人就任の挨拶に、市長の所に行きました。そこで市長から[ 東京のホテルニュージャパンで起きた火災により、ホテルの安全を保証する「適合マーク」を取らなければならなくなった。その施行は来年4月からだ。どうしても取得しなければならない。頼むぞ!] と、思わぬことを言われたのです。「適合マーク」のことは全く知りませんでした。さあ!大変です。大きな壁が次から次と立ちはだかりました。

最初は、板場やメイドさんからは「ズブの素人の、こんな若造に何が出来る」と白い眼で見られました。実はこのホテルの支配人は高山市の総務部長が退職すると就任するという、しきたりになっていたのです。白い眼で見られても当然です。

各部屋に泊まりながら、部屋の点検をしました。泊まってみて初めて、エアコンの音が喧しいことに気づきました。直ぐにメーカーを呼んで相談しましたが「古くて限界」と言われ愕然としました。

適合マーク取得に合わせて、館内のリニューアルを計画しました。全て行うと莫大な金額になりますので、最小限で眼に見えて効果が確認出来ることを行いました。

少しでもお客様に満足いただくために、各部屋を周り「飛騨めでた」を唄ました。この「飛騨めでた」は、大変な反響を呼び、集客に役立ちました。

約一年間勤務しましたが、予定通り4月1日に適合マークを取得し、旅行代理店の評判も良くなり、集客も順調に行くようになりました。ひと段落した時、高山市近郊にゴルフ場建設の話がありました。

   もう一度 唄たいよな 飛騨めでた

     瞼に浮かぶ  客の笑顔が

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