「人生は出会いで決まる」第15回

『このファッションショーから工場は大きく変わりました。「私もこのスーツ・ジャケットを着てみたい」と云う欲望が生まれたのです。私はこのファッションショーが終わると、倉庫に山と積まれていた不良品を、全て社員に配付しました。この不良品を見て、如何に良い製品を作らなければならないかを、自分で着て見て体感出来たのです。それから工場はファッションショーのようになりました。中国では道路が舗装されていないため、社員は私服で出勤し、不良品として、配付した服に着替えます。この結果工場内がファッションショーの会場と化したのです。

このファッションショーは色々な面で驚くような効果を上げました。まず第一は「社員の眼が輝き出したこと」と第二には「製品を大切に扱うようになったこと」です。その結果不良率が大幅に減少しました。この不良率は当初85%でしたが、ファッションショーが終わってからは20%を切るようになりました。この不良率が大幅に下がった要因は「手脂による不良品の減少と加工ミスによる不良品の減少」です。洗面所の増改築などのハード面より、ファッションショーによるソフト面の方がはるかに大きな効果を上げました。

このファッションショーは、お客様であるアパレルメーカーにも大きな反響を呼びました。自社で・自社の製品で・中国で・ファッションショーをするなど、アパレル業界でも縫製業界でも誰も考えつかないことでした。』