変化 31. 活性化事例「日中合弁会社」(10) 手脂

この「ファッション」は、大成功の内に終わりました。翌日、山の様に積まれていた不良品を全て従業員に上げることにしました。すると次の日の朝には、一枚残らず無くなり、製品を保管する倉庫の件で悩んでいたことが、一度に解消されてしまったのです。

そして驚くことに、出社する時は、泥だらけの道のため、作業着の様な服を着て出社していましたが、工場内に入ると、「何と!」昨日上げた不良品の服を修理して着ていたのです。工場内は見違える様に明るくなりました。

そして一番の効果は「如何に不良品を作ることが、お客様に迷惑をかけるか」を理解したことです。このファッションを境に、従業員の「意識」は少しずつ変わって行きました。

この頃、不良率を一番高めていたのは「手脂」の問題でした。この「手脂」が発生する要因は、「中国では手を洗う習慣がないこと」です。日本では考えられないことですが、中国では、トイレに行っても、手を洗うことはありません。この習慣が無いことから、出社しても、手を洗わず、仕事をすることで、「手脂」の不良が多発していたのです。

それを解決するには、洗面所の増設が必要でした。その工事を始めようとすると、従業員の代表数人が、私の所に来て「トイレの改修もお願い出来ませんでしょうか?」との申し出があったのです。

当時の中国のトイレは、奥行き3m、幅1.5mほどの真ん中に長い便器があり、そこに8~10人余りが入り、大小一度に用を足していたのです。これには驚きました。

このトイレは、「水洗トイレ」にはなっていましたが、水の流れが悪いことから、トイレの匂いが工場内に広がっていました。

                 続く

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