私はメガネ ( 12 ) ねこだ

何を思われたのでしょうか?下さんが「ねこだ」のことを、話しはじめられました。この「ねこだ」とは標準語で、藁で編んだ背負い袋のことです。下さんにはこのねこだに、懐かしい思い出があるようです。

ご先祖様の話では、お父様はお酒が好きで、毎日晩酌を楽しまれていました。お父様が失明さてからは、晩酌用のお酒を買いに行くのが、下さんの役割でした。

空の一升瓶を「ねこだ」に入れ背負い、2キロ程先の酒屋さんに買いに行かれました。行く時は空瓶でよいのですが、帰りは酒が一升は入っています。小学5年生には少し重かったようです。

雨の日もあれば、雪の日もありました。雪の日は近道が出来ないことから、幹線道路を遠回りしなければなりません。長靴を履いて、寒さに震えながら出掛けられました。時には雪の坂道で、滑って転び、酒が入った一升瓶を、割らしそうになつたことも、何回かあったようです。

下さんが酒を買いに行き、一番嬉しなったことは、帰ると「雪の中すまなんだなあ」と言われる父の一言でした。

美味そうにお酒を呑まれるお父様の姿は、今も忘れないとのことです。

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岐阜で撮られました。