「月の石で腰を抜かす」


『地球から38万キロ離れた月の石が私の家に来ました。決して落ちてきたわけではありません(笑)。この月の石が来たのは、今から22年前です。この月の石は奈良博覧会に展示されていたものです。私の知人がこの月の石を管理していたことから、是非月の石を飛騨の人達に見せて欲しいと依頼し、その夢が実現することになりました。私と社員と2人で名古屋駅の新幹線ホームにおいて、この月の石を受け取りました。まだ、その時点では腰を抜かすような高価なものであるということを知らず、大きな風呂敷に包み、高山線に乗り、持って帰りました。

それから数日後、アポロ17号の指令船操縦士であったロン・エヴァンスさんを迎え、高山市内のホテルにおいて公演を行っていただきました。月の石は約20日間、高山市内の金融機関等で展示されました。そして返却する日が来ました。私は宅急便でと思い、電話をしました。「その品物はなんですか?」「月の石です」と答えますと、「本部に問い合せ返事します」との答えでした。30分後電話が入り「この月の石は数十億円の価値があることから、保険料は一千万円です」との驚くような回答が来ました。さあ、そんなお金はありません。どうすればいいか家内と相談しましたが「なぜ、そんな高価な物を調べもせずに借りたの」と、家内は大きな角を生やしてカミナリを落としました。結果的に名古屋から持って帰ったように、又、大きな風呂敷に包み、今度は家内と2人で東京へ返しに行きました。

知らないということは本当に恐ろしいことです。しかし、この知らないということが想像を絶するような夢を叶えてくれます。この月の石は金家多美枝さんにも見せました。2020年には日本も月面探索ロボットを投入する等、この月の石が大きく脚光を浴びることは想像に難しくありません。しかし、この月の石がこんなに高価な物であるとは夢にも思っていませんでした。』