「馬鹿正直も度が過ぎると命を危機に晒す」第1回

『今思うと、ゾッとすることが多々ありますが、その中でも一番の思い出は、睡眠薬を飲んだことです。決して誤解をしないでください、自殺を目的に飲んだわけではありません。この睡眠薬自殺未遂事件は今から25年前、私が40歳頃に発生しました。夏の早朝、私の友人から電話が鳴りました。「知人が包丁を奥さんに突きつけて2人で心中しようと言っています。すぐに来てください。」その電話に眠気もいっぺんに吹き飛び、車に飛び乗り、その家につきますと、その電話の通り奥さんは真っ青な顔で、主人は正に奥さんを刺そうとしてみえます。さあどうすれば良いか?一瞬迷いましたが一か八かの賭けをしました。「それだけ死にたいのだったら、奥さんを道連れにせず一人で死んだらどう?」そしてしばらくしますと、少し主人の態度が変わってきました。そこで又一声掛けました。「なぜ、それだけ死にたいのか、一度話を聞かせてよ」と問いかけました。その問いかけをすると、奥さんに向けていた包丁を下に降ろしました。

家内に言わせると「お父さんは馬鹿がいくつつくか分からないほどの馬鹿」とぼろくそに言われます。いや私自身その通りだと思います。その方を私は自宅に連れて帰りました。お話を聞きますと、作っている作物が連作障害を起こし、全滅したとのことです。このことから悲観し、心中を考えたとのことです。私は直感的にこの方が少し精神的に異常があるのではないかと思い、知人の精神科に行きました。その先生から「すぐに病院に入院されたほうがいいです」との診断をいただきました。しかし、その方は薬を飲んではいけないという教義を受けてみえたことから、入院を拒否されました。そこで私は自宅に連れて帰りました。そして夜、その方がなかなか眠られませんので、病院で頂いた薬を飲むことにしました。その方は「薬は教義にあるので飲まない」と言い張りましたが「私も飲むから一緒に飲みましょう」と言って説得をし、やっとで2人で同じ睡眠薬を飲みました。』