墨壺 ⑺ 藁細工

「お父さん!令和の時代は雪掻きなどは、長靴を履いて仕事をしたけど、今、何を履いて仕事をするの?」「お母さん!見ておいで。女衆が集まって来たよ!さあ!これから縄ないや履き物の草鞋やずんべづくりが始まるよ。」

女衆は、藁打ち石を据え、その上に藁を乗せ、大きな木槌で藁を打ちを初めてました。「お父さん!何故藁を打つの?」「お母さん!藁はそのままだと芯が折れて加工がしぬくいんだよ。この藁を打つと、この芯が無くなり柔らかくなって、草鞋やずんべや縄など、どんな物でも作る事ができるのさ」「お父さん!藁つて本当に不思議ですね?」「そうさ!藁は米を作り、藁細工の材料となって、そして最後は稲などを育てる堆肥になるんだ!」「凄いわね!」

女集はお喋りをしたり、歌を歌ったり、時には旦那の愚痴まで聞こえて来ます。

「お父さん!囲炉裏の中から何か掘り出したわ?」「これはね。令和の時代のお菓子だよ。これは餅に似ているけど、材料は餅米ではなく、ヒエやアワ、栃の実・栗などを蒸して、柔らかくし、臼で突いて餅の様に丸めたのさ。これが冬場の大切な保存食さ。そして栗が入っているから甘いしね。それを前の晩に囲炉裏の灰の中に埋めて置くと、朝には丁度柔らかくなって食べ頃になるんだ」

「お母さん!陽が長くなると、朝ごはん前に、牛や馬などの草刈りに男衆は出かけるのさ。その時、囲炉裏の中のこの餅を持って行き食べるのさ!「これは美味しそうね!」「寒いから天生では米が余り獲れないんだ。だから寒さに強いヒエやアワを主食にして食べていたんだ」

女集はワイワイいいながら、この餅とかぶら漬けなどの漬物をつまみながら、藁細工に精を出しています。この女集が真心込めて作ったずんべを、男衆は毎日履いて材木出しに出かけました。

「お父さん!手袋はどうしたの?手袋は手が滑って危ないからしないさ。皆んな素手で仕事をするのさ」「冷たいわね!」「お母さん!熊や猪は靴を履いたり、手袋をしているかい😄」「していないわ!」「天は寒さや暑さに負けない、手や脚や身体を与えて下さっているのさ」「本当に凄い事ね」

「世の中が余りにも進みすぎると、寒さに耐える事が出来なくなり、石油や石炭などの化石燃料を使用し、それが令和の時代は、飛騨でも全く雪が積もらないなど異常気象となっていたね。それが地球の温暖化だよ。お母さん!令和の時代の空と比べると空の色が全く違うだろう!」「空が透き通って本当に綺麗!」

そんな話をしていると男衆が帰って来ました。「おい!帰ったぞ。今日は雪崩が来そうでな。早く切り上げた」「それはご苦労様でした」

女衆は藁仕事を切り上げ帰りました。

今日はこの様にして一日が過ぎて行きました。

「お父さん!皆んな寝る様よ。私達も寝ましょう」と言って二人で抱き合って寝ました。