「銀行亡国:再建放棄が日本をつぶすを読んで」第3回

 『今までに数十社の再建に取り組み、その再建の多くは成功しました。その1つの例をお話したいと思います。この企業は製造業で業績が悪化した最大の要因は先代の社長が亡くなり、その跡を継いだ後継者の経営技量の未熟にありました。その結果売上・利益率とも悪化し、メイン銀行から根本的な再建計画を立てなければ融資を打ち切り、整理対象企業として対応していくという厳しい指導方針が出されました。それに対応するために私のところに相談があり、すぐに再建計画の作成にかかりました。まず第1に行ったことが「後継者研修計画」の作成です。急を要することから月2回6ヶ月間実行する計画を立てました。第2には「売上・利益率低下の要因調査と分析」を行いました。第3には「休眠資産・不要経費の調査と見直し」です。特に重要視したのが支店の効果確認です。その結果支店の効果は薄いということから、支店を閉鎖することに決定し、人件費・管理費等で年間に約一千万円の削減を図ることができました。第4には「生産効率の改善」です。そのために徹底して生産プロセスの見直しを行い、生産管理システムの構築とエクセルによる簡易システムの構築を行いました。

 このような内容に基づき「再建計画書」を作成し、メインバンクに提出しました。その結果融資も継続的に行うことが決定し、整理対象企業としてのリストから除外されました。そしてこの「再建計画書」は3ヶ月おきに見直しを行い、その結果をメインバンクに報告することで信用を得、同時に後継者の経営技量も向上したことから、この企業はこの厳しい経営環境に中にあっても順調に推移しております。

厳しい経営環境の中にあればこそいかにして自社の現状を把握し、それを文書化し、メインバンクとの情報の共有化を図っていくかが大変重要であると考えます。恥部を決して隠すことなく表に出すことがメインバンクの信用に繋がることは間違いありません。』