「人生は出会いで決まる」第10回

『初日工場に入ってびっくりしたのは、余りにも汚れたトイレでした。水がしっかりと流れないために汚れ、悪臭がひどく、その臭いは工場内にまで広がっていました。慣れとは恐ろしいもので社員は余り気にしていませんでした。

私は1日でも早く掃除をしたいと思いましたが、意識改革の件がありましたので、しばらく観察していました。そして活性化開始から3ヶ月後の4月から工場全部のトイレ掃除を初めました。余りのひどさに目を覆いたくなりました。この掃除するトイレの大半は女性用です。社員数550人の内520人が女性です。女性用トイレを総経理(社長)がするのですから、社員は変な人が来たぞとばかりに白い眼で観ています。 女性のトイレ掃除をするとは、エッチな人だとも思われていたかもしれません。私はそんなことは余り気にせずただ黙々とトイレ掃除をしました。汚かったトイレも1ヶ月経つと、見違えるように綺麗になりしました。

そして2ヶ月経った6月のある朝、ライン長全員が私の部屋に入ってきました。私は何か買って欲しいとの話しだと思いました。しかしそれは「これから私達でトイレ掃除をします。総経理は掃除をしないで下さい。」とのことでした。

私が中国で活性化に取り組んだのは、毎月約10日間です。その中で毎日トイレ掃除をする姿を、みんなジーっと観察していたのです。それからは全員でトイレ掃除をし、それがキッカケとなって工場内も定期的に掃除をするようになりました。この掃除は不良率減少にも繋がりました。その理由は手を洗うことが習慣化し、その結果手脂が製品を汚さなくなったのです。』