卒業 29. 手脂

不良品の分析を進めるうちに「手脂」による不良品が多発していることに気づきました。この「手脂」の不良品を生み出している最大の要因は「中国の風習で手を洗う習慣がないこと」でした。

この頃の中国は発展途上で、道路は幹線道路も未舗装の所が多く、雨が降ると道路は泥道と化しました。その道路を従業員は自転車で通勤し、手も服も汚れています。手を洗う習慣がないことから、そのまま仕事に付きます。製品に「手脂」が付いても当然です。

しかしもう一つ課題がありました。それは「洗面所が少ないことと、手を拭くタオルが無いこと」でした。中国では手を洗う習慣がないことから、ハンカチを持っていないのです。そこで洗面所の増築を計画しますと、従業員から「トイレの改築もして欲しい」との要望が出ました。

最初に中国に行って一番驚いたのが、揚子江を渡る船の中のトイレでした。女性用のトイレに、どどど!と8人から10人が入って行きます。驚いたことは、そのトイレは、幅50㎝・長さ3m程の中で用をたすのです。正に過密状態です。工場のトイレも同じでした。そのトイレを、仕切りをした一人一人が用をたせるように、改装して欲しいとの要望でした。

トイレを改装すれば、一度に使用できる人員が、大幅に少なくなります。そこで「特別なことがない限り、休憩時間内でトイレを終わらせる」との約束を交わし、トイレを改装しました。

トイレの改装は、従業員の長年の夢だったようで、生産向上にも大きく貢献しました。

そして洗面所が増設されたことで「手脂」による不良率は大幅に下がりました。

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