人生の並木道 中年期 前期 前半 ⑸

専務と名刺交換をしますと、第一声が「失礼ですが、この様な大金を下裏さんが調達されたのですか?」と尋ねられました。「はい!私が調達しました」と応えますと、専務の顔は何処となく赤らんで来ました。「失礼ですが、下裏さんはお幾つですか?」「35歳です」と応えました。「少し今回の件の経過を教えていただけませんか?」と問いかけられました。「私は会計事務所の先生から廃業されるから残務整理をとの指示が出ましたので出向しました。
そして調査に入りますと問題は山積みしていますが、再建可能ではないかと思い、再建計画書を作成しました。そして再建出来ると確信し、一年前まで勤めていた飛騨信用組合へ、融資のお願いに行きました。今回作成した再建計画書が認められ、融資は承認されました。私もまさか全額融資が認められるとは思っていませんでした。驚きました。」「お幾ら融資を受けたのですか?」「一億円です」
「えっ!一億円⁉︎」専務は驚きのあまりしばらく無言でした。
専務から「今晩、会食をしたいと思いますが、ご都合は如何ですか?」と思いもよらない言葉が発せられました。そして又驚くようなことを言われたのです。「この席に社長と奥さん・常務も同席されたら如何ですか?」私は「はい!直ぐに連絡します」と応えました。この結果を社長に報告し、専務からの会食のお誘いの話をすると大喜びです。
その夜は名古屋市内の割烹で専務以下数名の役員の方と営業部長・経理部長、こちらから社長・奥さん・常務と私が参加し、大変和やかな宴になりました。しかし営業部長と経理部長の顔は苦虫顔でした。
さあ!本格的な再建開始ですが、調査を続けると大きな未払金が見つかりました。この未払金を整理するには、資金が足りません。早速親族会議を開きました。私も500万円出資し、何とか2000万円が集まりました。

  割烹の 料理の味も  何処へやら

    安堵の酒が  身体巡りて